はじめに
マラソン大会まであと1〜2ヶ月。この時期は「追い込み期」と呼ばれ、レース本番に向けて走力を仕上げる最も重要なフェーズです。
「大会前に何をすればいいのかわからない」「練習量を増やすべきか、質を上げるべきか迷っている」。そんな悩みを持つランナーは多いのではないでしょうか。
この記事では、大会1〜2ヶ月前の追い込み期に取り組むべき練習を、役割別にわかりやすく解説します。週間メニュー例も紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
追い込み期とは?
追い込み期とは、大会のおよそ4〜8週前の期間を指します。練習の質と量を最も高める時期であり、ここでの取り組みがレース結果を大きく左右します。
追い込み期の目的は大きく3つあります。
- 持久力の土台を完成させる(LSD・ロング走)
- レースペースへの対応力を磨く(ペース走・ビルドアップ走)
- 心肺機能を引き上げる(インターバル走・閾値走)
追い込み期に取り組むべき練習メニュー
🚶 1. LSD(ロング・スロー・ディスタンス)
追い込み期のLSDは、レース本番の距離に耐える持久力を仕上げるための重要な練習です。フルマラソンの場合、最低でも90分以上、できれば大会4〜6週前に25〜30kmのロング走を入れたいところです。
【ポイント】
- 強度の目安:RPE 3〜4(会話が続けられるくらい)
- 心拍ゾーン:最大心拍数の60〜75%
- 時間の目安:90〜150分(初心者は90分から)
- ペースは「遅すぎるかな」と感じるくらいでOK
- 大会3週前までに最後のロング走を済ませる
⏱️ 2. ペース走
ペース走は、レース本番で走る目標ペースを身体に覚え込ませる練習です。「このペースで走ればサブ4でゴールできる」という感覚をつかむことで、レース当日の自信にもつながります。
【ポイント】
- 強度の目安:RPE 5〜6(きついが続けられる程度)
- 距離の目安:10〜20km(目標レースの半分程度)
- ペース:レース目標タイムから逆算した1kmあたりのペース
- 週に1回、または大会前に重点的に取り入れる
🔥 3. インターバル走
インターバル走は速い走りとジョグを交互に繰り返すことで最大酸素摂取量(VO2max)を引き上げる練習です。追い込み期にこそ心肺機能を最大限まで高めておきましょう。
【ポイント】
- 強度の目安:RPE 7〜8(かなりきつい)
- 典型メニュー:1km×5本(レスト90秒)
- 心拍ゾーン:最大心拍数の85〜95%
- 「あともう1本いける」と感じる余裕を残す
- 週に1回が基本。無理しすぎないこと
📈 4. ビルドアップ走
ビルドアップ走はジョグペースから徐々にスピードを上げていく練習です。レース後半の「粘り」を養い、ペースコントロール力を高める効果があります。後半の失速を防ぎたいランナーに特におすすめです。
【ポイント】
- 距離の目安:8〜15km程度
- ペース配分:前半ジョグ→中盤レースペース→後半レースペース以上
- スピードの上げ幅:1kmあたり10〜15秒ずつ
- 月に2〜3回程度が適切
⚡ 5. 閾値走(テンポ走)
閾値走は乳酸が急激にたまり始める強度(乳酸性作業閾値)の前後で一定時間走る練習です。「きついが続けられる」ギリギリのペースを維持することで、持久的なスピードが向上します。
【ポイント】
- 強度の目安:RPE 6〜7(きついが続けられる程度)
- 時間の目安:20〜30分の一定ペース走
- 心拍ゾーン:最大心拍数の80〜88%
- インターバル走と交互に週のポイント練習に組み込む
追い込み期の週間メニュー例
以下は、週に5〜6回走る中級ランナー向けの一例です。体調やスケジュールに合わせて柔軟に調整してください。
| 曜日 | 練習内容 | 強度・RPE | 時間・距離 |
| 月 | イージーラン | RPE 3〜4 | 40〜50分 |
| 火 | インターバル走(1km×5本) | RPE 7〜8 | 約60分(アップ含む) |
| 水 | 完全休養 or 軽いジョグ | RPE 1〜2 | 0〜20分 |
| 木 | イージーラン | RPE 3〜4 | 40〜50分 |
| 金 | 完全休養 | ― | ― |
| 土 | ペース走 or ビルドアップ走 | RPE 5〜7 | 10〜15km |
| 日 | LSD(ロング走) | RPE 3〜4 | 90〜120分 |
追い込み期に知っておきたい注意点
【注意点1】休養日を必ず確保する
追い込み期は練習量が増えるため、休養なしではオーバートレーニングに陥ります。週に1〜2日の完全休養を入れ、身体の回復を促しましょう。
【注意点2】痛みや違和感は放置しない
膝や足首に痛みや違和感がある場合は、無理せず練習強度を落とすか休養しましょう。大会前のケガは最も避けたい事態です。
【注意点3】練習の「質」を重視する
距離をただ稼ぐだけでは効果は限定的です。ポイント練習では適切な強度を守り、イージーランではしっかり回復にあてる。メリハリをつけることが大切です。
【注意点4】一時的な走力低下に焦らない
追い込み期の後半は疲労がたまり、一時的に走力が落ちたように感じることがあります。これは正常な反応です。テーパリング期に入れば回復し、本番で力を発揮できます。
【注意点5】栄養と睡眠を意識する
練習量が増えると、その分エネルギー消費も増えます。炭水化物とタンパク質を意識的に摂り、十分な睡眠時間を確保しましょう。
よくある質問(Q&A)
Q: 大会1ヶ月前に30km走はやったほうがいいですか?
A: フルマラソンの場合、大会4〜6週前に1回は30km走を入れるのが理想です。ただし、大会3週前以降はダメージが回復しきれないため避けましょう。最後のロング走は大会3週前までに済ませておくのがポイントです。
Q: 追い込み期に毎日走っても大丈夫ですか?
A: 追い込み期でも休養日は必ず確保しましょう。週に1〜2日の完全休養を入れることで、身体が回復し、練習の効果が定着しやすくなります。オーバートレーニングはケガの大きな原因です。
Q: ポイント練習は週に何回が適切ですか?
A: 追い込み期は週に2回が理想的です。例えば火曜にインターバル走、土曜にペース走やビルドアップ走という組み合わせがおすすめです。間の日はイージーランで回復にあてましょう。
Q: 追い込み期にスピード練習は必要ですか?
A: はい、大会前の追い込み期にこそスピード練習が重要です。インターバル走や閾値走で心肺機能を引き上げておくことで、レース本番で余裕を持ったペース配分ができるようになります。
Q: 初マラソンの場合、追い込み期はどう過ごせばいいですか?
A: 初マラソンの方は、スピードよりも「距離への慣れ」を優先しましょう。週末のLSDで徐々に走行距離を延ばし、平日はイージーランで足づくりをするのがおすすめです。無理にスピードを上げる必要はありません。
Q: 追い込み期の食事で気をつけることはありますか?
A: 練習量が増える追い込み期は、炭水化物とタンパク質を意識的に摂りましょう。特にポイント練習後は30分以内に糖質とタンパク質を含む食事や補食をとることで、回復が促進されます。
まとめ
大会1〜2ヶ月前の追い込み期は、レース結果を左右する大切な時期です。LSDで持久力の土台を作り、ペース走でレース感覚を磨き、インターバル走や閾値走で心肺機能を引き上げる。この3つのバランスが大切です。
ただし、練習と同じくらい休養も重要です。無理な追い込みでケガをしては元も子もありません。自分の身体と対話しながら、着実に走力を仕上げていきましょう。
追い込み期が終わったら、次はテーパリング(調整期)に入ります。テーパリングについてはシリーズの別記事で詳しく解説していますので、そちらもぜひ参考にしてください。
本記事で紹介する練習メニューは一般的な情報提供を目的としています。個人差があるため、すべての方に同じ効果が保証されるものではありません。


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